出産を終えた女性の10人に1人が「産後うつ病」を発症しているという調査結果があるのをご存知ですか?
「自分が産後うつになるなんて…」「妻に限ってまさか…」と思われがちですが、病院を受診していない潜在患者数はもっと多いのでは?という声が、ママやパパたちの間からは漏れ聞こえてきます。
しかし、そもそも産後はホルモンバランスの変化から情緒不安定になりがち。
涙もろくなったり、イライラしたり、落ち込んだり…まず産後3日〜2週目までに「マタニティブルー」と呼ばれる生理的な症状が現れます。これについては程なくして回復していきますが、産後うつ病の場合は産後2週目を過ぎても症状が続くのが一つの特徴。抑うつ感や罪悪感が増し、頭痛や食欲不振などの症状が出はじめます。放っておけば、虐待や自殺などの「命に関わる事態」に発展する可能性もはらんだ病気が「産後うつ病」なのです。
それでは、どうすれば産後うつ病を回避することができるのか?
今回は「産後の女性の状態」を紐解きながら、夫と妻それぞれにできる対策を考えてみたいと思います。
1、産後の女性は「ネガティブ」になりやすい…
妊娠中は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンが大量に分泌されます。しかしそれが出産とともに激減。代わりに、授乳を促すプロラクチンというホルモンが急増するなど、妊娠期から産後にかけての女性はホルモンバランスの変化が激しく、ただでさえ情緒不安定になりがちです。
こうした中でスタートする赤ちゃん中心の生活は想像以上にハード!
出産で完全に体力が戻りきれていない中、はじめの1〜2ヵ月くらいは、昼夜を問わず授乳やオムツ交換を行うことになるなど、睡眠不足に悩まされます。「眠れないのは確かにきつそうだよね」と軽く受け流してしまいそうなところですが、十分な睡眠がとれていない中では疲労感が増し、思考力も低迷しがち。「赤ちゃんの体重が増えない」「赤ちゃんが寝付いてくれない」「赤ちゃんが泣き止まない」…と、赤ちゃんの様子一つひとつが不安に感じられ、ますます情緒不安定な状態に陥り易くなるのです。
このような状況に加え、掃除や洗濯、食事の準備などの日々の生活に欠かせない家事が重なってくると、自分のことは完全に後回しになりがち。落ち着いてトイレを済ませる、お風呂にゆっくり浸かる、冷めないうちに食事を味わう…など、日常の些細なことさえ思うようにできなくなる中、自分の置かれている状況をネガティブに捉えてしまう人は少なくありません。中には、「赤ちゃんと二人きりでいるのが怖い」「赤ちゃんが可愛いと思えない」など、子育てに対する自信や前向きさを失ってしまう人もいます。
夫にできること
まず第一に、産後うつになるのは心が弱いからではありません。産後の体調の戻り具合や、産まれた子どもの性質(よく泣く、長く寝ないなど)、日常的に一緒に育児や家事に取り組んでくれる人の有無など、さまざまな条件が重なる中で、誰もが陥る可能性があるものと理解し、産後の妻の異変を見過ごさないようよく観察しましょう。涙もろい状況が続いたり、「自分は母親失格だ」「死んでしまいたい」「いつか子どもを傷つけてしまうかもしれない」「子どもなんか産まなければよかった」などの具体的な言葉が出てきている場合などは、楽観視せず「もしかしたら…」と思ってください。
また、早くに気づけるようになるためにも、普段の会話レベルのコミュニケーションを大切にしましょう。「今日は赤ちゃんはどうだった?」と子どもの1日の様子を訊ねるだけでなく、「今日は何か良いことあった?困ったことは無かった?」と、妻自身が1日をどのように過ごし、何を感じているのか、その点に関心を持って話に耳を傾けるのもポイントです。妻にできること
産後の辛さや大変さを一人で抱えないように心がけてください。「皆通ってきた道だから私ももっと頑張らないと」などと他者と比較せず、自分の心の声をよく聞いてあげましょう。辛さや大変さは、比較できるものではありませんし、一人で抱え込んでしまうと心や体は簡単に疲弊します。
また、母親が元気でなければ、子どもに元気を与えることができません。ゆっくりお風呂に浸かったり、深夜のオムツ替えを夫に交代してもらって眠る時間を確保したり、リラックスや休息に繋がる時間を確保しながら、1日の中で「自分のためだけ」の時間を持てるよう、夫をはじめ、周りをしっかり頼りながら子育てできる環境を整えましょう。
2、産後は「神経質」になりやすい…
小さな命を育む日々には「責任感」や「緊張感」が伴うもの。意識的であれ無意識的であれ、産後の女性は身の回りのほとんど全てを「赤ちゃんを優先」で考え、動くようになりがちです。
そうした中、普段よりも健康面や衛生面に気を遣うようになる人は多いのですが・・・
・家の中が埃っぽくならないように、掃除機や雑巾掛けを頑張ろう
・お風呂場にカビが発生しないように、毎日こまめに拭きあげよう
・良い母乳を出すために、毎食栄養バランスを考えた食事をつくろう
・赤ちゃんの肌着は防ダニのために全部アイロンを掛けよう
・オムツは全部手作りの布おむつを使おう
など、一つひとつ丁寧にこなそうとする中で家事育児を完璧にできない状況に直面し、その度に気に病む人は少なくありません。赤ちゃんの安全や家族の安心を第一に考え、一所懸命に育児や家事に取り組んでいる証拠と言えば聞こえは良いですが、人によっては「妻失格、母親失格」などと必要以上に自分を責めてしまうこともあります。
夫にできること
「そんな大げさな…」「なんだ、そんなこと?」と思っても、妻がこだわっていることを頭から否定することだけはしないようにしてください。一見大したことが無いように思えても、妻にとって「それ」は大切なことなのです。むしろ、不安を払拭するための行為である可能性があります。妻のこだわりの裏側にある「不安」に寄り添い、一緒に考え行動する姿勢を示すこと。まずそれが重要です。
また、産後は「母乳を与える以外のこと」は夫にもできます。子どもの親は母親だけではないと自覚し、「家事や育児においてできること」を増やしてください。とはいえ、妻の求めに100%応じることに意識が捉われていると、今度は夫側が息苦しさを感じ、うつになってしまうことも…。言われてやるのではなく、自らの意思で、率先してできる家事・育児を増やしていくことが大切です。妻にできること
一人目育児はもちろん、二人目でも三人目でも、産後は誰しも思うようにいかないものです。そもそも赤ちゃんを相手に、「完璧」を目指しても通用しません。重要なこと、緊急なことに目を向け、それ以外のことに掛ける力を加減することが大切です。
また、何かにつけて「◯◯してくれない!」と夫や祖父母に怒りの矛先を向けるのは得策ではありません。日々の家事や育児の中で、こだわりたいこと・気になることがあっても、自分一人のやり方を押し付けるのではなく「皆でやり方をつくっていく」意識を持ちましょう。
片付けや掃除などが複雑になってしまうもの・ことを生活に取り入れない工夫も良いですね。夫婦・家族間でお互いが気持ちよく生活できるルールを考えたり、生活をシンプルに保つ工夫をすることで、余計なストレスを感じずに済むようになります。
3、産後は「孤独」を感じやすい…
赤ちゃんかわいいね!出産おめでとう!
…周りから祝福の言葉をもらう一方で、産後の妻は「孤独」を感じがちです。
それというのも、産後しばらくは安静に過ごす必要がある上に、生まれたての赤ちゃんを連れて外出することがはばかられるなど、どうしても「外の世界」が遠くなりがち。授乳とオムツ交換の無限ループと進まない家事に追われながら、言葉が通じない赤ちゃんと家で二人きり。時には、何をしても泣き止んでくれない赤ちゃんを一人であやしながら、誰ともまともに話をせずに1日を過ごすこともある産後の生活の中で、人知れず孤独を深めるケースは少なくありません。
・大人と会話がしたい。
・誰かと話がしたい。
こうした声が産後の女性から聞かれた時は、人や社会との結びつきが希薄に感じられ、孤独感が強まっている時の一つのシグナル。
我が子と一緒に過ごす時間の中で、寝姿や笑顔に癒されたり、嬉しさや楽しさを感じられる場面もありますが、孤独感が深まる中で、物事の良い面に目を向けたり、明るい未来を想像する力は発揮し辛くなります。
また、夫の仕事が忙しく「出張が多い」「朝出かけるのが早すぎる」「帰りが遅すぎる」というタイプのご家庭も要注意!表面的には「仕事を頑張ってくれているのだから仕方がない」と割り切っているように見えても、ふとした時に「放っておかれている」ように感じられ、自分一人だけで育児をしているような感覚や、社会から取り残されてしまったような感覚を抱くこともあります。
夫にできること
人生のプライオリティ(優先事項)を考えてください。妻が孤独を感じたり、子どもや家族の笑顔が失われるような事態を防ぐことよりも優先すべきことがあるでしょうか?あまり重要でないこと、他で埋め合わせが効くことには時間を割かないようにするなど、産後は夫も時間の使い方を見直す必要があります。産後の妻の支えになるための時間や、家族で過ごす時間も、産後の夫にとって大切な「自分の時間」であるはず。自分を含む家族全員が笑顔で居られる状態を目指しましょう。
妻にできること
あえてストレスの強い人間関係に飛び込む必要はありませんが、身近な夫や祖父母、友人をはじめ、育児の大変さや辛さ、楽しさや嬉しさを共有できる人と子育てをすることを意識してください。
また、毎日少しの時間でも外出して、普段と違った景色に触れるのも効果的です。出先で大人の人と話したり、電話やメールで周囲と連絡を取り合うなど、外の情報を適度に取り入れてみるのも良いでしょう。かえって「不安や焦り」のような感情を持ち帰ってしまうこともあるかもしれませんが、そうした心のゆらぎを抱え込まずに、夫をはじめ、身近な友人に打ち明けるなどして気持ちを発散していくことも大切です。
産後うつ病は誰にでも起こる可能性があるとはいえ、こうした情報を夫婦で把握しておくことが事態の悪化を防ぐ上で大切です。
また、できる限りの対策を講じた上で産後うつ病と診断された場合にも、希望を捨てずに「良くなる」と信じて夫婦・家族で協力体制を再構築していきたいもの。その際には、妻だけ・夫だけ・夫婦ふたりだけでどうにかしようと意固地にならず、周囲の力を借りることを前向きに考えてみてください。
赤ちゃんにとっても、お母さんとお父さんのどちらも笑顔でいてくれることが一番です。
産後を迎えるご夫婦が、この先も互いを信頼し、協力して我が子により良い家庭環境をつくっていけるよう心から願っています!
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『夫婦会議®︎』とは、
人生を共に創ると決めたパートナーと、
より良い未来に向けて「対話」を重ね、
行動を決める場のことです。
自分ひとりの意見を通すため、相手を変えるために行うものではなく、「わたしたち」で答えを創るためのもの。
特に育児期においては、わが子にとって、夫婦・家族にとって「より良い家庭環境」を創り出していくことを目的に行います。
家庭は社会の最小単位であり、子どもたちが最初に触れる社会そのもの。『夫婦会議®︎』は、ちょっとしたことから大切なことまで、前向きな気持ちで「対話」できる家庭環境づくりを応援します。
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